師走の中山競馬場で、幾多の好レース、名勝負が繰り広げられてきたグランプリ・有馬記念。その陰には様々なエピソードも数多くあった。
今年の大一番を前に、そんなドラマを読み返しておこう。 ※馬齢はすべて現在の表記です

1976・77年 トウショウボーイvsテンポイント

レース史に刻まれる至極のライバル対決

 有馬記念が来るたびに語られるのがトウショウボーイとテンポイントである。「TT」と呼ばれたライバルの二度の戦いは有馬記念史のハイライトでもある。
 1976年の有馬記念は賑やかな顔ぶれとなった。春秋の天皇賞馬エリモジョージ、アイフル。アメリカのワシントンDC国際(6着)から帰国した最強古馬フジノパーシア。牝馬二冠馬テイタニヤ。アメリカ産の快速馬スピリットスワプス、札幌記念でトウショウボーイを破ったグレートセイカン……。しかも、エリモジョージ、スピリットスワプスという強力な逃げ馬を相手にグレートセイカン陣営が逃げ宣言をしていた。
 そうしたなかで3歳のTTは格違いの、おとなの走りを見せた。逃げ馬たちのうしろでレースを進めた2頭は、4コーナーで先頭に迫ると、直線であっさりと抜け出し、早めに先頭に並びかけたトウショウボーイがテンポイントを1馬身半差振り切って優勝した。
 そして翌1977年、4歳になったTTはさらなる驚きの走りを見せる。スタートでトウショウボーイが先頭に立つと、すかさずテンポイントが追いかける。逃げ馬のスピリットスワプスだけでなくほかの馬たちも完全に無視され、TTは2頭だけで2500メートルを走り抜いた。
 競馬史でもっとも熱いマッチレースはトウショウボーイのラストレースとなり、前年の雪辱をはたしたテンポイントの最後のゴールにもなってしまった。

江面弘也=文
text by Koya Ezura