平松さとし
フランス現地リポート 第3回
ニエル賞・ヴェルメイユ賞・フォワ賞プレイバック

2016/09/12

ニエル賞(G2)
ニエル賞はマカヒキを含め5頭立てで行なわれた。マカヒキ以外にG1勝ち馬はなく、重賞勝ち馬もG3・クラシックトライアルS勝ちのあるミッドタームだけ。いやが応にもマカヒキのパフォーマンスに期待がかかった。
スタートからハナを切ったのはミッドターム。これにドーハドリームが続き、マカヒキは3番手。さらにダラバド、カルゾフと続いた。5頭立てということもあり、レースはそのまま淡々と流れた。前半1400メートルの通過が1分34秒19という超のつくスローペース。とくに番手も変わることなく直線へ向く。
前を行く2頭の外へ持ち出し、追撃態勢に入ったのがマカヒキ。逃げたミッドタームが最内、その外にドーハドリームがいずれもよく粘ったが、更にその外に出したマカヒキがルメールの左ムチ2発に応え伸びると、最後はクビ差先着してゴールに飛び込んだ。ペースが遅かったため勝ち時計は2分35秒84と遅く、着差も僅かにクビだったものの、内容的には力差を見せつける競馬だった。レースの上がり3ハロンが33秒98だからマカヒキはそれよりも速い脚を使ったことになる。シャンティイでほぼ究極に近い数字を叩き出したのではないだろうか。
本番は今回よりずっと強いメンバー構成になるし、頭数も増える。それだけに今回の勝利を手放しで喜ぶわけにはいかないが、逆にいえばここで取りこぼしているようでは本番でどうこうは言えない。まずはフランス初陣を見事に飾ったダービー馬と、陣営に拍手を送りたい。(平松さとし=文)

ヴェルメイユ賞(G1)
本番と同じシャンティイの2400メートルで行なわれる3つのプレップレースの中で唯一のG1ヴェルメイユ賞。そんなこともあり、例年、頭数がそれなりに揃い、前哨戦の中でも最も速い時計で決着する傾向にある。
しかし、今年はこのレースも6頭立て。ということもあり、前半1400メートルが1分31秒20という淡々とした流れになった。
枠入りに手間取り、最後は覆面を着けられ強引に枠へ入れられたエンドレスタイムだが、ゲートが開くとハナを奪った。好スタートを切ったレフトハンドはこれを行かせると控えて4番手の外。2、3番手がザジュリエットローズと昨年のこのレースの2着馬カンダルリア。後方の5、6番手はゴールデンヴァレンタインとハイランズクイーンがほぼ馬体を並べて通過した。
ニエル賞もそうだったがここも遅い流れ。そのためほぼ馬順にも変化がないまま3コーナー、4コーナーをカーブして直線へ。直線に向くと逃げるエンドレスタイムの内へ潜り込もうとしたカンダルリアは失速。外へ出したザジュリエットローズもなかなか差を詰められないのに対し、更に外へ出したレフトハンドは鞍上M・ギュイヨンの叱咤に応え、一完歩ごとに前との差を詰め、最後は半馬身ほどかわしてゴールに飛び込んだ。
勝ち時計は2分33秒23。同馬は仏オークス(ディアヌ賞)でラクレソニエールの2着。この馬が勝ったことで凱旋門賞に出走する仏オークス馬が間接的に株を上げる形となった。(平松さとし=文)

フォワ賞(G2)
古馬のフォワ賞もわずか4頭立て。ニエル賞との違いは古馬の一戦らしく皆が重賞勝ち馬であった点だが、それでも決してハイレベルといえるメンバー構成ではなかった。
レースは予想通りイトウが逃げた。昨年のジャパンCにも参戦したこの馬はこの頭数ということもあり、ゆったり自分のペースで逃げた。それでも1800メートルの通過タイム1分57秒72はニエル賞の2分1秒86、ヴェルメイユ賞の1分59秒20より速い。
2番手はシルバーウェーヴで3番手がエリプティク。その後ろにワンフットインヘヴンという隊列で流れた。
そのレースが動いたのは直線に入ってから。逃げ込みをはかるイトウにシルバーウェーヴが並びかけると次の瞬間にはあっさりパス。あとは同馬が突き抜け、イトウが2着で粘り込んだ。
勝ったシルバーウェーヴは前走のサンクルー大賞に続き重賞を連勝。前々走のイスパーン賞では3着とはいえ勝った日本のエイシンヒカリからは大きく離されたが、この連勝で勇躍凱旋門賞へ進むことになった。
それにしても今年の3つのプレップレースはいずれもスローの逃げ馬が2着に残るのを尻目に実力馬が少し差して決着した。レースの内容自体は決して濃いとは言い辛いだけに、各馬の今後の上がり目が要点となりそうだ。(平松さとし=文)