2016/09/15
前日まで晴天が続いていたシャンティイ地方だが、9月11日、凱旋門賞の前哨戦当日は明け方に大量の雨が降った。
日が出たあと、小降りにはなったものの、降ったり止んだりを繰り返しながら第1レースを迎えた。しかし、第3レース、マカヒキが出るニエル賞の頃にはなんとか雨は落ちず、曇天にまで天候は回復した。
15時発走のレースだが、マカヒキが厩舎を出たのは11時。それでも充分過ぎるくらい早く、競馬場に到着した。
「久しぶりの競馬だったことと、当日これだけギリギリに輸送されるのも初めて。そもそも初めての環境ということもあり、これまでで初めてというくらいテンションが上がりました」
管理する友道康夫調教師は後にそう語っている。もっとも、次のように続けているのだが。
「でも、すぐに落ち着きを取り戻し、パドックを回る頃にはいつもの堂々とした感じで歩いていました」
同調するのは手綱をとったC.ルメール騎手だ。
「リラックスしていてすごく良い感じでした」
日本から帰ってきたフランス人ジョッキーは1週間の滞在中も追いかけられっぱなしだったが、この日も騎乗前のパドックでマイクを向けられるほど注目を集めていた。
ゲートが開くと逃げたのはミッドターム。これにドーハドリームが続き、マカヒキは3番手を追走した。この時点で「しめた」と思ったのは友道師だ。
「フランスの競馬をよく知るジョッキーだったので何も注文はつけなかったけど、逃げだけはしないようにと話していました」
最初の1400メートル通過が1分34秒19で1800メートルが2分1秒86。“超”のつくスローペースだが、マカヒキは掛かることもなく3番手をキープした。
直線に向き、前を行く2頭の外に出すと徐々に前との差を詰めた。しかし、極端にペースが遅かったせいで先行した2頭も余力充分。当然、速い上がりになったので捉まえられそうでなかなか捉まえられない。
「内外が離れてしまったから……」と友道師。しかし、鞍上は「大丈夫、大丈夫って思いながら乗っていました」と言う。
ラスト1ハロンを切ってからはルメール騎手が少し体を斜めにするようなシーンもあり「ちょっと、ステップが悪くなりました」と同騎手。それでも「最後はムッチャ速かった」というようにラスト1ハロンを11秒03で伸びて前を捉まえてみせた。
「良い追い切りになりました」と笑った友道師は「それで結果も1着だったのだから今日のところは問題ありません。あとは本番までにまた上がってくれるように仕上げていきます」と力強く語った。
また、ルメール騎手もホッとした表情をみせたものの、キッと唇を結ぶと、改めて言った。
「今日のメンバーと凱旋門賞は全然チガウ。でも3週間あるからマカヒキはもっと良くなります。応援よろしくお願いします!!」
まずは良い形でフランス初戦を飾った日本のダービー馬が次走で更に素晴らしいパフォーマンスをみせてくれることを願おう!! (平松さとし=文)