合田直弘
今年の香港競馬を振り返る

2016/12/4

15/16年シーズン後半の香港競馬を牽引したのは、ワーザー(せん5、父Tavistock)だった。
ニュージーランド産馬で、2歳の夏に祖国でデビュー。オーストラリアで走った3戦を含めて13戦し、チャンピオンシップS(G2),イーグルファームC(G2)と、2重賞を制覇。
サウスオーストラリアンダービー(G1)2着、クイーンズランドダービー(G1)2着などの実績を残した後、15/16年シーズンから香港に移籍。香港4歳シリーズ初戦の香港クラシックマイル(香港G1)、2戦目の香港クラシックC(香港G1)でいずれも2着になった後、シリーズ最終戦の香港ダービー(香港G1)に優勝。
そして、勢いに乗って参戦した国際競走のクイーンエリザベス2世C(G1)も、後続に4 1/2馬身という決定的な差をつけて快勝。シーズン最終戦となったチャンピオンズ&チャッターズC(G1)こそ人気を裏切り3着に敗れたものの、ワーザーは香港年度代表馬に選出された。
そのワーザーにアクシデントが起きたのが、16/17年シーズンの開幕を1週間後に控えた8月27日だった。調教後に厩舎へ戻る道すがらで転倒して負傷。戦線を離れることになったのだ。香港国際競走にもその姿はなく、今年の香港勢は「大将」抜きの戦いを余儀なくされるかに見えた。

ところが、香港国際競走を前にして、タイミングを計ったかのよう戦列に戻ってきたのが、14/15年シーズンの香港年度代表馬エイブルフレンド(せん7、父Shamardal)だった。
14年の香港マイル(G1)、15年のチャンピオンズマイル(G1)など、4つの国際G1を含む9つの重賞を制覇。15年3月のクイーンズシルバージュビリーC(G1)、15年10月に香港プレミアボウル(G2)を制した際に、香港調教馬としては歴代最高のレイティング125を獲得。香港競馬史上の最強馬と謳われたのがエイブルフレンドである。
ところが、昨年の香港マイル(G1)で3着に敗れた後、屈腱炎を発症。管理するJ・ムーア調教師の祖国で、屈腱炎治療に関して最先端の技術を持つとされる豪州に渡り、再起を図ることになった。
そのエイブルフレンドが、11月20日にシャンティンで行われたジョッキークラブスプリント(G2)で、戦線復帰を果たしたのである。
結果は4着だったが、11か月という休み明けだったことを考えれば、決して悪い競馬ではなく、12月11日は自身2年ぶり2度目の優勝がかかる香港マイル(G1)に出走する。
かくして、香港勢はエイブルフレンドという「大将」を中心にして、今年の香港国際競走に臨むことになった。

(合田直弘=文)