未来に語り継ぎたい名馬
異彩を放った黄金の王者
オルフェーヴル
2013年 有馬記念
2008年5月14日生 牡 栗毛
父 ステイゴールド
母 オリエンタルアート(父 メジロマックイーン)
馬主/(有)サンデーレーシング
調教師/池江泰寿(栗東)
生産牧場/(有)社台コーポレーション白老ファーム(北海道・白老町)
通算成績/21戦12勝(うち海外4戦2勝)
主な勝ち鞍/11・13有馬記念(GI) 12宝塚記念(GI) 11菊花賞(GI)
11日本ダービー(GI) 11皐月賞(GI) 12・13フォワ賞(仏GII)
13大阪杯(GII) 11神戸新聞杯(GII) 11スプリングS(GII)
馬名の由来:金細工師(フランス語)
20代以下、30代が支持
●型破りな強さと脆さの魅力はぜひ語り継ぎたい(40代・女性)
●負けたのに強さが際立ってみえた。私はこのような馬を見たことがない(30代・男性)
●オルフェーヴルより面白くて個性的で魅力的な馬は現れないと思う!(30代・女性)
●「この馬推すのに理由がありますか?」という事です(30代・男性)
●阪神大賞典の衝撃は忘れません(20代・女性)
●記憶に残る迷優、記録に残る名優(40代・男性)
三冠馬が開花した軌跡には競馬の難しさと醍醐味が
大きな能力は往々にして器からこぼれ落ちてしまうものだ。それを防ぐために器の縁を高くする工夫や努力。競走馬の「調教」はそうたとえることもできる。そんな過程のもとで能力の翼を広げていったのが、歴代の三冠馬とは一線を画した個性派オルフェーヴルだった。
仲間の馬をしきりに恋しがる甘えん坊で、レースに集中できずにいた2歳の秋には、放牧先で自立心を養わせるような調教を積んだ。3歳の1月に復帰してからは、目先の勝利ばかりを追い求めずにじっくりと折り合いを教え込んだ。圧巻の強さを披露して三冠を達成、返す刀で有馬記念も制した3歳春以降の快進撃は、そうした教育の結実でもあった。
しかし開花した能力はまさに器からこぼれ落ちるほど大きなものだった。派手な大立ち回りを演じた阪神大賞典、馬群から抜け出した途端に内へ切れ込んでしまい、手中に収めかけていた勝利をつかみ損ねた凱旋門賞、そして「脚は残っているのにまっすぐ走らず、ジェンティルドンナに寄っていってしまった」(池江泰寿調教師)というジャパンC。4歳時に喫した3つの惜しい──とはいえ実に印象的な──敗戦は、器の“縁”がまだ足りていなかったことを物語る。
これを受けて陣営は自立心を養うための調教を再開。一方では「人馬の折り合いをより、しっかりつけること」を目的に、フラットワークと呼ばれる馬場馬術の調教も取り入れた。こうして臨んだ5歳時のフォワ賞では、スローな流れにもスムーズに折り合い、直線に向いて抜け出してからも後続をしっかりと突き放して連覇を達成。続く凱旋門賞ではトレヴの軍門に降って大願は果たせなかったものの、引退レースの有馬記念では圧巻のファイナル・ウインを飾った。早めに仕掛けて先頭へ躍り出た直線、見る見るうちに後続を突き放し、終わってみれば8馬身もの着差を開いて駆け抜けた最後のゴール。それは数々の課題と向き合い、乗り越えながら陣営が目指してきた完成形の走りそのものだった。
器からこぼれ落ちてもおかしくなかったオルフェーヴルの能力は尽くされた人智に支えられて大きく花開いた。異色の輝きを放つ開花の軌跡には、「人と馬」が一体になって勝利を目指す競馬ならではの難しさと醍醐味が示されている。
(文=石田敏徳)