未来に語り継ぎたい名馬
歴史の扉を開いた名牝
エアグルーヴ
1996年 オークス
1993年4月6日生 牝 鹿毛
父 トニービン
母 ダイナカール(父 ノーザンテースト)
馬主/(株)ラッキーフィールド
調教師/伊藤雄二(栗東)
生産牧場/社台ファーム(北海道・早来町)
通算成績/19戦9勝
主な勝ち鞍/97天皇賞・秋(GI)
96オークス(GI)
97・98札幌記念(GII)
98大阪杯(GII)
97マーメイドS(GIII)
96チューリップ賞(GIII)
馬名の由来:冠名+わくわくさせる
30~40代の女性から高評価
●あの時代に牡馬の一線級と互角以上に渡り合った彼女が居たからこそ、今の強い牝馬の時代があるのだと思います(20代・女性)
●競走時は天皇賞・秋を制覇、繁殖としても牡牝のGI 馬を送り出しました。殿堂入りしても不思議のない馬だと信じています(30代・男性)
●牝馬活躍のさきがけとなったエアグルーヴの天皇賞・秋が思い出深いです(30代・男性)
●女傑!この馬が牝馬時代の布石では(20代・男性)
過去の名牝の偉業を新たな形で再現、 未来の牝馬たちの頑張りへと繋げた
ウオッカやダイワスカーレット、ブエナビスタやジェンティルドンナを見慣れた相手に、エアグルーヴについて話すのは難しい。牝馬が今ほど強くなかった時代に、牡馬と互角以上に戦ったというだけでは、まだ何か足りない気がするのだ。
母娘2代のオークス馬。17年ぶりの牝馬の天皇賞馬。26年ぶりの牝馬の年度代表馬。でも語るべきことはまだまだある。
マックスビューティ、ダイイチルビーなど数々の「名牝」を育てた伯楽、伊藤雄二調教師が、生まれた翌日にその姿を見て「これで男のシンボルが付いていたらダービー馬だ」と話したという逸話。2歳秋、致命的な不利を受けながら差し切った伝説のいちょうS。熱発で出られなかった桜花賞、レース中に骨折していた秋華賞。皐月賞馬ジェニュインに完勝した札幌記念。ピルサドスキーとの死闘と、その翌年エルコンドルパサーに食らいついた、2年連続のジャパンC2着。
牝馬である以前に、歴史に残るほどの稀有な能力と、そして不思議と魅力的なドラマを引き寄せる運命を持った競走馬だった。そのことは間違いない。
母のダイナカールがオークスを勝ったのは83年、グレード制導入の前年だった。後に始まった空前の競馬ブームの、それ「以前」と「以降」とを、エアグルーヴが結びつけてくれた。80年のプリテイキャストの大仕事を、71年のトウメイの偉業を、新たな時代に再現した。あの時代にエアグルーヴとともに歩んだファンには、そんな感触があったはずだ。
その頑張りは、過去のすべての牝馬の頑張りと、そしてウオッカからジェンティルドンナへと続く未来の牝馬たちの頑張りへと繋がっていた。そんな見方もできるんじゃないだろうか。
(文=軍土門隼夫)