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1年にわたる世代の頂点をかけた戦いは、いよいよ最終決戦を残すのみとなった。2歳戦から順調に歩んできた馬もいれば、後半戦になって急浮上してきた新星もいる。2012年生まれのサラブレッドたちによるクラシック戦線はどのように展開してきたのか、第82回日本ダービーへの道のりを振り返ってみよう。

年が明けて主役が交代 起伏の激しいダービーロード

すべての道はダービーへと続くが、ひどく混雑する道もあればスムーズな道もある。昨年、2歳の重賞路線にいくつか手直しが施されたが、狙いのひとつは混雑を解消することにあった。

 最初の混雑ポイントは新潟2歳Sと札幌2歳S。クラシック候補にとって数少ない夏の大目標である。新潟2歳Sでは18頭立ての馬群を捌いたミュゼスルタンが接戦を制した。一方の札幌2歳Sは、優先的に出走できるはずの新馬戦勝ち馬で抽選となる大混雑。レースは東京から転戦したブライトエンブレムがフルゲートの多頭数をひと捲りで飲み込んだ。

 11月は毎週2歳重賞が行われて、各レースにメンバーが分散、混雑は一段落する。近年素質馬が集中する傾向があった東京スポーツ杯2歳Sも、昨年は13頭立てに留まった。新馬勝ち直後のサトノクラウンがここを快勝して、ダービーへと繋がるハイウェイに乗ったが、その背景として除外の心配なく調教を積めたことがあったのも見逃せない。

 2歳暮れの牡馬の大レースはこの世代からは二本立てだ。長い直線の阪神マイルに移動した朝日杯フューチュリティSはダノンプラチナ、皐月賞と同じ舞台のホープフルSはシャイニングレイ。マイルと中距離、二つの頂点はいずれもディープインパクト産駒によって極められた。

 2月にはきさらぎ賞と共同通信杯、同じ距離の重賞が2週続けて行われ、頭数は落ち着く。今年の共同通信杯は12頭立て。ドゥラメンテが中1週の強行軍で挑み、ダービー出走権確定へ勝負をかけたが、荒っぽいレース運びが響いて2着に敗れた。切符を奪い取ったのは、同じ勝負服のリアルスティール。12月に新馬を勝ってすぐという果敢な重賞挑戦だった。共同通信杯からは、4着のミュゼエイリアンが毎日杯で賞金を積み重ねて最終決戦へ駒を進める。

 3月の皐月賞トライアルで各路線が合流、本番に向けてサバイバルが始まる。弥生賞では失速するシャイニングレイを尻目にサトノクラウンが完勝。スプリングSではダノンプラチナを下してキタサンブラックとリアルスティールがワンツー。暮れの大レースを制した両馬が主役の座を明け渡す結果になった。

 皐月賞はクラシックロードの最初の目的地だが、ダービーに向けての経由地でもある。サトノクラウン、リアルスティールが中山の両トライアルで主役を演じたのに対し、ドゥラメンテは直行。小回りコース未経験が不安視されたが、潜在能力がここで開花する。三強の構図を打ち壊し、圧倒的な強さで皐月賞を制した。

 皐月賞上位3頭はすべて今年になって頭角を現した馬だ。一方、2歳重賞の活躍馬はほとんどが勢いを失っている。いつになく起伏が激しかったダービーロードも、ダービー前哨戦からの合流を経て、いよいよ一本道になってゴールが見えてきた。強い皐月賞馬がこのまま突っ走るか。あるいはまだ波乱が待っているのか。

※当コーナーは、優駿6月号の誌面に基づき制作されています。