師走の中山競馬場で、幾多の好レース、名勝負が繰り広げられてきたグランプリ・有馬記念。その陰には様々なエピソードも数多くあった。
今年の大一番を前に、そんなドラマを読み返しておこう。 ※馬齢はすべて現在の表記です
外国産馬であったため、当時はクラシック競走に出走できなかったグラスワンダー。内国産馬として生まれ、強い競馬で日本ダービーを制したスペシャルウィーク。同期でありながら違う道を歩んだ2頭が激突したのは1999年のことだった。
初対戦は宝塚記念。結果は、グラスワンダーが豪快な末脚で差し切り、スペシャルウィークを3馬身も突き離して完勝した。
思わぬ差をつけられて敗戦を喫したスペシャルウィークだったが、雪辱の機会はその年の暮れ、有馬記念で訪れた。毎日王冠を勝ったあと、やや順調さを欠いたグラスワンダーに対して、スペシャルウィークは天皇賞・秋とジャパンCを連勝しての出走。単勝オッズ2.8倍対3.0倍と、この2頭が上位を占めて運命のレースを迎えた。
中団の後ろ目を進むグラスワンダーに対して、スペシャルウィークは最後方を追走。2周目の3コーナーからグラスが仕掛けて出ると、スペシャルもそれを追うように位置を上げて直線へ。先に出るグラスと追いかけるスペシャル。ゴールを迎えた瞬間、両馬の体は完全に重なり合っていた。それでも勝利を確信してウイニングランを終えた武豊騎手はスペシャルを1着の枠場に入れ、的場均騎手はグラスを2着の位置に導いた。しかし長い写真判定の結果、軍配はグラスワンダーに上がる。その差は推定4センチとされる究極の僅差。立場の違う同期のライバルが見せた激闘は、伝説的な大接戦となった。
三好達彦=文
text by Tatsuhiko Miyoshi