日本ダービーこと東京優駿は、競馬における最高峰の戦いであり、その栄光を手にした人馬は例外なく我々に希望や感動を与えてくれる。近年の勝ち馬を振り返ってみても、そこには様々な物語が存在していた。

例がないほどの混戦模様の中 馬を信じた大外一気

ディープスカイ

5番人気までが単勝1桁台となった混戦模様の一戦を制したのは、1番人気ディープスカイ。直線で前が壁になりながら大外に進路を取り、目の覚めるような末脚でNHKマイルCに続くJpnⅠ制覇を達成した。

キングカメハメハ以来の「新・二冠」制覇だった


 08年牡馬クラシックは、かつて例がないほどの混戦模様となっていた。皐月賞馬キャプテントゥーレは骨折で戦線離脱した。2歳王者ゴスホークケンは迷わずマイル路線に進み、しかも極度の不振に陥っていた。

 そんな「混戦ダービー」の1番人気がディープスカイだった。NHKマイルCをほとんど最後方から差し切った、能力はかなり高いけれど不器用な、マイラー寄りの追い込み馬。単勝3.6倍と「押し出された」感の強いオッズには、そんな微妙な評価が透けて見えていた。

 勝ち上がりに6戦を要し、その後も500万下2着、アーリントンC3着。毎日杯とNHKマイルCを追い込んで連勝したものの、ハイレベルなメンバーが揃う東京の2400メートルで同じことができるかどうか。しかしディープスカイは、同じことをダービーの舞台でもやってみせた。

 直線で大外に出されると1頭、また1頭と抜き去っていく。最後は内の競り合いを横目で眺めるように、まとめて交わしてゴール。キングカメハメハ以来の、NHKマイルCとダービーの「新・二冠」制覇だった。

 四位洋文騎手は、前年のウオッカに続く2年連続のダービー勝利。愛馬の末脚を信じ切った、その気持ちの強さが呼び込んだ勝利だった。