日本ダービーこと東京優駿は、競馬における最高峰の戦いであり、その栄光を手にした人馬は例外なく我々に希望や感動を与えてくれる。近年の勝ち馬を振り返ってみても、そこには様々な物語が存在していた。

豪脚を武器に他馬をねじ伏せ ついに誕生した“新・二冠馬”

キングカメハメハ

直線、早めに進出を開始すると、追いすがるハーツクライらを振り切ってキングカメハメハが勝利。レースレコードを更新するとともに、松田国英調教師がこだわったNHKマイルCとダービーの両制覇を達成。

新時代の到来を強く予感させる圧巻のレースぶりで戴冠


 レース設立当初はダービー出走権のない外国産馬のための「マル外ダービー」などと呼ばれた。そのNHKマイルCとダービーを両方制した馬こそ「本当に強い馬」だ。そんな新しい価値観を最初に主張し、クロフネやタニノギムレットで率先して挑戦してきた松田国英調教師が、この年、キングカメハメハという逸材を得て、またもチャレンジしてきた。

 京成杯で3着と不覚を取った以外は、底知れぬ強さで勝利を重ねていたキングカメハメハ。外国産馬ではないし、そもそもすでに皐月賞もダービーも外国産馬に開放されていた。それでも、毎日杯を勝った愛馬を、松田調教師は敗れた京成杯と同じ舞台の皐月賞へは向かわせず、史上初の「新・二冠」制覇に挑ませる。

 NHKマイルCを今もレース史上最大の5馬身差で圧勝したキングカメハメハは、ダービーも危なげない走りで完勝。ハーツクライ、スズカマンボ、ダイワメジャー、コスモバルクといった、その後の活躍を考えれば相当なレベルのメンバーを、いとも簡単に下してみせたのだった。

 タイムはレースレコードを更新するもので、まさに新時代の到来を強く予感させた。のちの種牡馬としての大成功も含め、間違いなく日本競馬を変えた1頭といえる。