日本ダービーこと東京優駿は、競馬における最高峰の戦いであり、その栄光を手にした人馬は例外なく我々に希望や感動を与えてくれる。近年の勝ち馬を振り返ってみても、そこには様々な物語が存在していた。

"最強世代"の優駿たちをひと飲みにした抜群のキレ味

エイシンフラッシュ

1000メートル通過が61秒6のゆったりした流れの中、道中は後方に待機していた7番人気エイシンフラッシュが、直線で上り32秒7の末脚を繰り出し、“最強世代”と評されるほどハイレベルな戦いを制した。

3ハロン32秒7という究極の上りでライバルたちに先んじた


 07年生まれのこの世代が「最強世代」と呼ばれるようになっていったのは、この年の秋にローズキングダムがジャパンCを、ヴィクトワールピサが有馬記念を勝ったあたりからだった。翌春もヴィクトワールピサがドバイワールドCを制し、ヒルノダムールが天皇賞優勝。さらに1年後にはルーラーシップが香港のG1クイーン・エリザベスⅡ世Cを勝ち、そうした評価は決定的になった。

 そして、いま名前のあがった全馬が出走していた10年ダービーを勝ったのが、エイシンフラッシュだった。

 レースは直線、瞬発力比べの真っ向勝負となった。インから抜けるヴィクトワールピサ。外から差すローズキングダム。しかしその間から、矢のようにエイシンフラッシュが伸びた。上り3ハロンは究極ともいえる32秒7。もちろん、記録が取られ始めてからのダービーにおける最速だ。

 5歳秋、エイシンフラッシュは、まるで自分こそが「最強世代」の王者なんだとあらためて主張するように、天皇賞・秋を制してみせた。そして、ほとんどのダービー馬が5歳までには引退していく中、6歳一杯までGⅠ戦線の上位を争い続けた。「最強世代」のダービー馬は、やっぱり真に称えられるべき、偉大なダービー馬だったのだ。