日本ダービーこと東京優駿は、競馬における最高峰の戦いであり、その栄光を手にした人馬は例外なく我々に希望や感動を与えてくれる。近年の勝ち馬を振り返ってみても、そこには様々な物語が存在していた。

ドロドロの不良馬場で決めた 乾坤一擲のイン強襲

ロジユニヴァース

ダービー史上に残るドロドロの不良馬場となった一戦。皐月賞馬アンライバルドがもがく中、力勝負を制したのはロジユニヴァース。皐月賞14着からの巻き返しで、横山典弘騎手をダービージョッキーの座に導いた。

全馬の脚が止まる我慢比べで内から抜け出して凌ぎ切った


 降り始めたのは昼過ぎだったが、土砂降りの雨が、あっという間にターフを泥田のように変えていく。09年ダービーは、ダイシンボルガードの勝った69年以来、40年ぶりに不良馬場で争われるダービーとなった。

 そんな馬場以上にこのダービーを難しくしていたのが、皐月賞の内容だった。息の入らないハイペースで流れ、有力馬が先を争うように早めに動き、馬群に沈んでしまったのだ。そんな期待を裏切って沈んだ「有力馬」の代表が、1番人気で14着のロジユニヴァースだった。

 迎えたダービー、皐月賞と同じ1枠1番からスタートしたロジユニヴァースは、内でレースを進めた。直線に入ると、そのままインをこじ開けるように抜け出し、残り200メートル手前で先頭に立つ。

 皐月賞はハイペースで先行馬の脚が止まった。そしてこのダービーでは、スタミナを無慈悲に奪う不良馬場で、最後は全馬の脚が止まった。そんな壮絶な我慢比べを、ロジユニヴァースは凌ぎ切ったのだった。2分33秒7のタイムは、ダイシンボルガード後の40年間で最も遅かった。

 皐月賞2ケタ着順から巻き返してのダービー優勝は、86年のダイナガリバー以来23年ぶり。まさに不屈の根性でもぎ取った勲章だった。